食事による抗酸化成分の摂取とサルコペニア肥満の関連性

フレイル、サルコペニア

米国の2001~2004年全国健康栄養調査結果を基に、高齢者2,333名を対象として、複合食事抗酸化指数(CDAI)とサルコペニア肥満(SO)との関連性を調べた。多変量ロジスティック回帰粗モデルによると、CDAIとSOの相関のオッズ比(OR)は0.928(95%CI: 0.891-0.965、p<0.001)であった。完全調整後のCDAI第2三分位と第3三分位のORはそれぞれ0.626(95%CI: 0.463-0.842)と0.487(95%CI: 0.354-0.667)であった(傾向のp<0.001)。サブグループ分析の結果、性別、高血圧症の有無に関わらずCDAIとSOの間に信頼性の高い正の相関関係がみとめられた。ただし、CDAIとSOの相関の強さは糖尿病によって大きく影響を受け(相互作用のp=0.027)、糖尿病患者はSOのリスクが高かった。さらに、高齢者のCDAIとSOの間にL字型の相関関係があることがわかった。本研究の結果は、将来の食事ガイドラインの策定に重要である。

He Wu, et al. Front Nutr. 2024; 11:1428856.

米国における食事からの抗酸化成分摂取と握力の相関

複合食事抗酸化指数(CDAI)は、食事中のビタミンA、C、E、セレン、亜鉛、カロテノイドの複合スコアである。CDAIは、炎症誘発マーカーTNF-α及び抗炎症作用のあるインターロイキン-1β(IL-1β)に対する複合効果に基づいて開発された。握力は全体的な筋力と高い相関関係があり、サルコペニアやフレイル等の診断ツールとして機能する。2011~2014年の米国全国健康栄養調査を基に、米国の成人6,019名を対象にCDAIと握力の関連性を調べた。CDAIは握力と統計的に有意に正の相関関係があった(β=0.009、0.005~0.013、P<0.001)が、サブグループ解析では、男性のCDAIと握力が有意に相関したのに対し、女性のCDAIと握力に相関関係はみられなかった。男性のビタミンE、亜鉛、セレンの食事摂取量は握力と有意に相関し(β=0.005、0.002〜0.009、P=0.011、β=0.007、0.004〜0.011、P=0.001、β= 0.001、0.001〜0.001、P= 0.004)、女性の亜鉛の食事摂取量は握力と有意に相関した(β=0.005、0.001〜0.008、P=0.008)。

Dongzhe Wu, et al. Front Nutr. 2023; 10:1147869.

血漿カロテノイド値はフレイルのバイオマーカーである

欧州の4つのコホートの高齢者1,271名を対象に、食事関連の血液バイオマーカーパターンとフレイルおよびプレフレイル(フレイルの前段階)の関連性を調べた。血漿中のα-カロテン、β-カロテン、リコピン、ルテイン+ゼアキサンチン、β-クリプトキサンチン、α-トコフェロール、γ-トコフェロール、レチノールの量に基づき主成分分析を実施した。健常な参加者は、フレイル及びプレフレイルの参加者と比較して総カロテノイド、β-カロテン、β-クリプトキサンチンの濃度が高く、フレイルの参加者と比べてルテイン+ゼアキサンチンの濃度が高かった。25-ヒドロキシビタミンD3とフレイルとの関連は認められなかった。2つのバイオマーカーパターンが特定され、主成分(PC)1パターンは、血漿中のカロテノイド、トコフェロール、レチノールの総量が高く、PC2パターンは、トコフェロール、レチノール、リコピンの含有量が高いとともに他のカロテノイド量が低いことが特徴であった。分析の結果、PC1の最高四分位は、最低四分位と比較して、フレイルである可能性が低かった(オッズ比: 0.45、95%CI: 0.25-0.80、p=0.006)。一方、PC2の最高四分位の参加者群は、最低四分位よりもフレイルのオッズ比が高かった(2.48、1.28-4.80、p = 0.007)。カロテノイドはフレイルの指標として適した成分であることが示された。

Thorsten Henning, et al. Nutrients. 2023; 15(5):1142.

高齢者のたんぱく質摂取とフレイル

高齢者のたんぱく質摂取とフレイルとの関係について調べた観察研究について、システマティックレビューとメタアナリシスを実施した。2022年1月に検索を実施し、60歳以上の参加者を含む、英語、イタリア語、ポルトガル語、スペイン語の研究を対象とした。スクリーニングにより、地域在住の高齢者計46,469名を含む横断研究12報と縦断研究5報が採用された。メタアナリシスの結果、横断研究では、たんぱく質摂取の絶対値、体重調整値、総エネルギー消費量に対する割合はフレイルと関連していなかったが、フレイル状態にある高齢者は健康な高齢者よりも動物由来たんぱく質摂取量が有意に少なかった。一方、縦断研究では、たんぱく質摂取量が多いと、フレイルになるリスクが有意に低下することが示された。

Coelho-Junior, et al. Nutrients. 2022; 14(13):2767.

高齢者の筋肉量維持とたんぱく質摂取パターン管理

筋肉量の減少を特徴とするサルコペニアは、加齢に加え、座ることの多い生活習慣やたんぱく質のマイナスバランスなど、いくつかの条件によって引き起こされる。2016年の世界保健機関の報告によると、2025年までに高齢者のサルコペニアは38%増加すると予想されている。本レビューは、加齢の過程において骨格筋量を維持するために、たんぱく質の摂取量、品質、1日の摂取パターンを管理することの重要性について説明した。入手可能な文献のデータによると、高齢者は1.6~1.8g/kg/日のたんぱく質を摂取することが推奨され、1日の総摂取量に注意するほか、3回の主食で1食あたり少なくとも0.6g/kgのたんぱく質(5g以上のロイシンを含む)を摂取するとメリットがあることが示された。さらに、適切なエネルギー源の摂取により負のエネルギー消費バランスを防ぐこと、週2回以上の筋トレ、座る時間を減らすことも推奨される。

Patricia S Rogeri, et al. Nutrients. 2022; 14(1):52.

高齢者のビタミンD摂取と骨格筋維持に関するレビュー

骨格筋は人体最大の器官で、体重の約40%を占め、運動やエネルギー消費に重要な役割を果たしている。高齢者では、骨格筋の量と機能低下が進行する症状、サルコペニアがよくみられ、寝たきりや車椅子生活、生活の質低下につながる。近年、サルコペニアに関係して、脂溶性ビタミンであるビタミンD(VD)が注目されている。本レビューは、VD欠乏症やVD摂取とサルコペニアとの関係に焦点を当てた。日本の食事摂取基準(2020年版)のVD摂取の目安量は、5年前の5.5µg/日(220IU)から8.5µg/日(340IU)に引き上げられた。しかし、米国とカナダでは71歳以上の推奨摂取量20µg/日(800IU)とする等、諸外国よりもかなり低い。また、国際骨粗鬆症財団は、高齢女性の転倒と骨折の予防には20~25µg/日(800~1000IU)の食事からのビタミンD摂取が必要としている。いくつかのVD摂取の介入試験により、VDが高齢者のサルコペニアに効果があるとされている。しかし、VDの筋肉組織に対する作用は、そのメカニズムが複雑であるため、VDの筋肉維持または強化効果についてはまだ議論されている。

Ran Uchitomi, et al. Nutrients. 2020; 12(10):3189.

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